ビデオショップにて。




  014:ビデオショップ






  *水野竜也*小島有希*


「だからっ、あたしは小林サッカー見ようって言ってるじゃない」
「嫌だ。この前の金曜ロードショーでやってたの見たんだよ」
「いいじゃない別に2回見たって」
「たいして面白くなかったから言ってるんだ」
「面白いって!あの有り得なさが!!シュートで壁が崩れるんだよ!?」
「あのなー、大体二人で見ようって言ってるのに、っておい!」
 有希は小林サッカーのビデオを片手に意気揚々と受付へ向かった。

 …二人で見るのだから二人の意見が一致したものを見るのが正しいと思うのだが。
「スターウォーズにしとこう、っていう俺の意見は完全無視なんだな?」










  *椎名翼*西園寺玲*


「これはどうかしら」
「……」
 玲が差したものは、翼にとっては「古い」といった内容。
「…太陽にほえろ?」
「久々に見たいなって思ったんだけど」
「……ジェネレーションギャップってこういうことを言うのか」
「ちょ、翼、聞き捨てならないわよその言葉!」
 けらけらと笑う翼は、玲の追求をはぐらかして、太陽にほえろの1巻を手に取った。










  *佐藤成樹*上條麻衣子*


「お嬢、ローマの休日とかもあるでー。どんなんが好きなん?」
「……ええと」
「…お嬢?」
「……いえ、こういった所に来るのは……」
「へえ?初めてなん?」
「……っ、べっ、別にそんなことはありませんわよ!」
「家で映画とか見んの?」
「見ますわよ、レーザーディスクがありますもの」
「んじゃ、今日はB級映画見よか。レーザーディスクにはなってないようなやつ」
 佐藤の機転を利かせた物言いに、上條は何故か頭を抱えたくなった。










  *U-14*

「俺これ見たい!」
「どれ?げっ、リング?俺反対。絶対反対」
「結人、一馬はスプラッタものとか怖いやつ駄目だって分かってて言ってるでしょ…」
「えーつまんねー。すっげ限定されてくるじゃん」
「結人、これがいい。これ」
「どれ」
「えーと?ああ、この前のワールドカップのビデオだね」
「ブラジル代表の試合を網羅!見たくねえ?」
「それなら俺はフランスのがいい」
「ブラジルだって!だってこの試合でさ、シュートの決まり具合が神業なんだって」
「フランス!」
 ビデオを選ぶはずが、単なるサッカー談義になっていると気付くのはこれから15分後。










  *武蔵森学園サッカー部(じゃんけんに勝った選抜四人)*

「だから、俺は絶対にっ!ホットショットをお薦めしますって!なっ、タク!」
「誠二、俺はアクションあんまり好きじゃないんだけど。らせん希望〜」
「お前ら好き勝手言ってんな。おっ、渋沢、ディープインパクトにしようぜ」
「お前こそ好き勝手言うなよ、三上」
 しかし渋沢の視線の先には…。
「っ、キャプテン!それは!それだけは止めましょう!」
「そうっすよキャプ!それは流石に!」
「渋沢、お前の趣味は知らなかった…」
「…駄目なのか?」
 彼が見ていたのは、「極道の妻たち」。
「流石に、寮で皆で見る映画には適していないかと…」
 笠井が冷静なツッコミをすると、渋沢はとても残念そうな表情を浮かべた。

 結局、彼らが借りたのは至極一般的な「ホームアローン」であった。
 しかし男四人で借りる映画ではないのではないかと気付いたのは残念ながら借りた後のことだった。










 オムニバス形式ってやつで。こういう感じはとても好きなので、またやりたいと思います。
 どうにも、どれもこれも中途半端な話と言われればそれまでという気もしますが。






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