ああ、本当は絶対に些細なことだよ。
Every Littre Thing だ。
※注意※ 綴りが間違っててもそっとしておいてやって下さい。
024:ガムテープ
「誰よこんなところにガムテープ張ったのはっ」
「俺だけど」
彼は自身がこれから怒りの矛先になることをまだ知らない。
それは新入生歓迎会前の、忙しい、それはそれは忙しい時期のこと。
ばたばたと音を立てて走り回っていた小島が、そこを通りかかった時。
そこには桜上水サッカー部のレギュラー(一部)が集まっていた。
具体的には、10番を背に負う司令塔、クラッシャーと呼ばれた守護神、ものまね上手なウィングバック、金髪のもんじゃ好きである。
サッカー部と、その女子部の勧誘方法の考案、及びチラシ作り等で小島はてんてこ舞いになっていた。
「だから」いらいらしていた、とも、言えないでもない。
俺だけど、と言った方向に首を回し、顔を確認すると小島は思い切り息を吸い込んでから一気にまくし立てた。
「高井っ、あんたか!私はワシントンの父じゃないわよっ」
「何が言いたいっ」
なんだよ小島?
俺はただ言われたとおりに。
そう、言われたとおりにサッカー部部室から一番近い階段にポスター貼ってるだけだぞ。
「ふむ。つまり正直に罪を告白しても許さないという意味だな」
「不破、考察と補足説明してないで止めてやれよ」
そういうタツボンこそ止めてやれ。
そうシゲはポスターを数枚抱えながら思った。
高井と小島の喧騒から少し離れた所で、水野と不破が冷静な会話をしている。
シゲは頬を軽くかきながら更に冷静にしている。
…そろそろ逃げ出し時かもしれない。
こんな事とろとろやってられん、というのがシゲの本音である。
そろりそろりと少しずつ後ずさって退却用意。
前で不破が水野に「ワシントンのあの逸話は事実とは違っている」といった雑学を披露している。
「先生に怒られるのは私なのよ!」
シゲの思惑には全く気付かず、階段の壁に貼られたポスターをバン、と叩きながら小島は熱弁する。
水野はああ、と納得した様子で一歩近寄った。
「あー、これか。高井、お前が悪い」
「何がだよ、だから」
「これ、紙のガムテープだろ」
水野は小島の代わりに冷静さを保ったまま口を挟んだ。
いらいらしている小島がこのまま突っ走ると確実に良い事があるはずがないと思う。
「あ?ああ」
「それ、使ったら学校の壁の塗装はがれるんだ。やってみろよ」
「あ?げ、ほんとだ」
紙のガムテープにくっついて塗装の一部が剥げてしまった。
その部分だけ、凹んでいるし色も違うことが一目瞭然だ。
「あと窓も、布ガムテープじゃないと取れにくい」
「あー、ほんとだな」
なるほど、と、一件落着、と、高井が逃げようとしたが、小島は易々と逃がしてはくれなかった。
「だから学校は全面的に紙ガムテープの使用を禁止、
また布ガムテープを窓、アルミサッシに限って許可したのよ」
小島は公民の教科書を読み上げるかの如くすらすらと言った。
「なるほどっ…」
こそこそと数歩後ずさりした高井の首を小島は笑顔で捕まえる。
「それをっ、部費会議の前にこんなささいな問題でも起こしたらねちねち部費減らされるのよ夕子ちゃん弱いし!」
たかがガムテープ、されどガムテープ。
「高井の馬鹿。使えない。やっぱりこういう時は水野が役立つわ」
「なんだよ」
ぱっと高井の首を離すと、水野が驚きを含んだ嫌そうな顔で小島を見ていた。
「いや、あんたならこういう状況もちゃんと分かってるからねー。やっぱ使える人材と見込んで良かったわ」
「んなこと言ったって何も出てこないぞ」
なんだかんだ言いながらまんざらでもない、といった風を隠している水野に高井は軽い嫉妬を覚えた。
いや、嫉妬ではないのかもしれない。
理不尽さに似ている。
なんだよ、結局水野かよ、といった言葉しか浮かんでこない自分の語彙力のなさにさえあきれる。
だいたい貼るの頼むんなら先に言っとけよ、紙のガムテープは駄目だって。
そう思ったが、そういえば貼りに行く前に小島が「これ使って」と布ガムテープを差し出したのを思い出した。
その前に自身の腕に紙ガムテープを通して持っていたから「もう持ってるって」と呟いたのだが、すでに小島は走り去った後だった事を思い出す。
「…やっぱ俺が悪いのか…?」
ため息をつくしかない。
不破が遅れてやってきた風祭にこれまでやっていたことの説明をしている。
校庭の方を見るとシゲがどうも逃亡しているし、一気にやる気がなくなった。
「高井、何やってんのよ。ほら、手伝う手伝う」
「あっ…ああ」
今度は布ガムテープを受け取ってアルミの階段の手すりに貼っていく。
ちょっと落ち込み気分で小島と水野の方を見ると。
「ということで、使える水野君。これとこれとこの書類、ちょっと片付けお願いねっ」
「はっ!?」
「私これから夕子ちゃんとことおかまだサンとこ行かなきゃなんないの」
「だからって何で俺が…!」
「だから、あんたが一番仕事出来るじゃない」
「この量半端なく多いぞ…」
「だってそれ一年分の部誌の整理したヤツとこの地域の中学の傾向と対策ノートだもん。その上のは予算表だから水野、書いといて。じゃっ」
ああ、俺、仕事出来なくて良かったかもしんない。
しみじみ思った。
水野と小島が付き合ってるってホント?
「サッカー部だからあんた何か知ってるんじゃないの」
しょっちゅう聞かれる話だ。
しかしである。
もしそうならば絶対水野は尻にしかれている。
断言して良い。
付き合ってるか付き合ってないかは知らないが、何にしろ主導権は小島にあることは間違いない。
ガムテープひとつでこんなことを思い知るとはよもや思わなかった。
「…なんで俺が」
水野の呟きは高井に聞こえなくもなかったが、「手伝ってやろうか」という言葉は、高井の口からはついぞ聞こえなかった。
ミズユキ←高井? 高井がミズユキを傍観するとどうだろうと思ってたんですがー…。
なんか最初の方、高井有希っぽい(笑)
まとまりが全くない駄文だなぁとしみじみ…。
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