026:The world




 ちゃぷ ちゃぷ

 ちゃぷ ちゃぷ



 ……



 きゅ



 ざー



 ……







 とれない

 血がとれない







 ざー






 リア王、だっけ。
 それかフォーティンブラス。
 そんな題名の劇を見た。

 そう、狂っている演技が、凄い迫力だったのを覚えている。

 女の人が狂って、人を殺した血が、

 手から取れなくて。

 本当はもうとっくに取れているのだけど。

 そんな映像は、狂っている女に見えるはずがない。




 取れない取れない取れないこの身から悪しき血が取れない取れない




 そう信じるまでに狂うほど。

 人を殺すことは自らをも殺すのだろうか。



「何琵琶湖の水減らしてるん?」

 そう、覗き込んだのは。

「大阪府は財政赤字やねんで〜」

 紛れもなくワタシの。

「どうしたん?」

 …ワタシの?何?



 ざー……きゅっ……

 ……

 佐藤は私を見ながら私の名を呼ぶ。
 どうしたんやろねえと独白気味に言い、蛇口を右にひねった。

 バケツから溢れ出ていた水が表面一杯になって溢れるのをやめた。
 流れを止めてしまう水。
 排水口に流れ、吸い込まれていくものを見つめ。
 佐藤の行動に戸惑っていた。
 何。
 何なの。



 頬にかすめる、佐藤の髪、息、唇。



「元気でたか?」


 場所さえも、忘れてしまうほど。









 ここは?
 ここは学校の、グラウンドの、隅の、小さな手洗い場。





 ……



「……出るか!アホ!」
「お、いつもの委員長やな!」
「何やねんな!!コラ待て佐藤!!」





 そう。
 佐藤を殺したら。
 佐藤なら私も狂えるかもしれない。

 私の彼氏でも。
 きっと運命の相手でもなくて。
 友人やクラスメイトと呼ぶには妙に素っ気無い気もするけれど。
 友達っていうのもなんか違う。
 ほんのちょっと前に転校してきたヤツだから幼なじみでもない。

 そんな、名前を付けられない関係。
 曖昧な関係が心地良かった。




 ぴちょん



 例えばアンタを殺したら、私は狂えれるよ。




 ……


 ……



 ぴちょん




 そんな次の日だった。
 佐藤が消えたのは。

 あのキスは、私へのさよならだった?
 結局アンタは、何も言わなかったね。
 言ってほしかったのかと自問して答えを出さずに苦笑する。



 私はお返しに、昨日の水道にホースをつけて。
 小さい虹を作ってやった。

 きっともう。
 この世界できっと会うことは、ない。





 ……

 ぴちょん








 シゲさんってとにかくあちこち流れたと思うので、大阪編。
 でも方言が似てて耐えられなくなって逃亡。
 お嬢さんは、中学生特有の破壊衝動やら悲観やらを感じていた風が出ればいいなと。





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