「W杯 韓国−アメリカ 李潤慶が先制ゴール」



  027:電光掲示板




 煌々と。

 そこに映っていたのは、紛れもなく自分の従兄弟の名で。

 一年の出遅れ。

 それは生まれた時からの出遅れで、決して自分が悪かったり、まして親が悪かったりはしない。
 さらに努力とは無関係のもので。

 それでも何か焦燥感が郭を襲う。


「俺は…」


 まだそこには行けない。
 その光の中には行けない。


 テレビに映ることが夢だとかそんなことは言わない、だが、それでもブラウン管に眩しさを覚える。

 世界の第一線で活躍すること。

 それが目指すところ。
 いつも自分の先を行く従兄弟が街の電光掲示板にさえ表示されている。
 しかたがない、と、言い訳したくない。

 それでも、と、郭は思う。

 ため息にも似た息を漏らし、郭は電光掲示板から目を逸らした。
 早く帰って試合中継を見よう。鞄を持ち直した。




 例えば「待ってなよ」、なんて言わない。
 待たなくて結構。大いに進んでよ、それでも俺は追いつくから。


 そんな言葉を想像して郭は口の端を上げた。


 もう彼は電光掲示板を振り返ることはしなかった。









 郭ってこんな感じで潤慶にコンプレックスを抱いていそうなんですよね。
 コンプレックスってそれでひねちゃうか目標になれるかが自分との勝負だと思います。
 にしても潤慶…ゴールしたって書いちゃったけど…。
 …まぁゴールしちゃうこともありますよね!司令塔だしね!





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