気にもなってなかったやつが、気になってしかたがなくなって。
 恋愛は甘いなんて言ったやつはどいつだ?

 こんなに切なくて苦しくてどうしようもなくなるのに。




  035:髪の長い女





 髪の長い少女がいた。
 クラスで可愛いとかで目立ってた奴。
 俺には興味なかったし、その頃はサッカー部の現状に意識は向いてたから。
 だから、その女が今隣にいることが信じられない。


 一生懸命な姿に、勝気な笑顔に、試合中の真剣な眼差しに、心奪われた。
 おい、それ、俺の心だぜ。
 勝手に盗ってくなよ。

 そんなこと、考える余裕もなく、中学生の頃、俺の心はサッカーと小島で一杯だった。
 今より純粋にそれだけ思って、それだけで毎日が過ごせていた。
 それって、やたらとしあわせだったんじゃないか?




「髪伸ばしたんだな」
「うん。中学のときから水野って私の髪の毛の話題振ってくるよね」
「…そうか?」
「うん、髪伸ばすのかとか、野球部の男じゃあるまいし切るなよとか」
「…あんまり記憶にないな」

 言った記憶はないが、確かに小島の艶やかな髪に見惚れたことの記憶はあった。
 マネージャーとして紹介したときのさらりと流れる髪なんかも、未だに鮮明だ。




「ふーん。ここにシゲからのメールがあります。」
 携帯をじゃん、と効果音付きで(もちろん小島が言った)取り出した。
 ご丁寧に右手で持った上、左手を恭しく添えている。


「…は?」
「本文より抜粋。タツボンは中学ん時小島ちゃんは絶対髪長い方が好みやったで〜。以上」
「待て、何でそんな内容のメールしてるんだ」
「水野がこの前ニュースに出ててね、それで」
「それがどうしてその内容になる」
「ま、いいじゃない」
「良くない」

 彼女曰く。

 「水野がかっこつけてニュース出てたの見た?!おもしろかったー」
 「見たでー。女子アナ相手やったからちゃうか」
 「うっわ恥ずかしいやつね!」
 「髪長いコやったしなぁ」
 「?どういうこと?」
 「いや、タツボンは髪長い方が好みやと思うんや」
 「そうなの?聞いたことないけど」
 「いやいや。タツボンは中学ん時小島ちゃんは絶対髪長い方が好みやったで〜」

 という流れだったそうで。
 そこまで問いただすと割と図星だったことに赤面する。
 なんだよ。見抜くなよ。



「あ、水野照れてる?ぷぷぷ。かっわいー」
「照れてない可愛くない」
 のぞき込んでくる小島に背を向ける。

「うーわ、すねてやんの。かっわいくない」
「可愛くなくて結構」




 俺と髪の長い少女の距離は教室の席の3mだった。
 俺と髪を切った少女の距離は部室のイスの1mになった。
 そして、俺と髪の長い女の距離は今。





 ゼロ。











 何ですか水野さん、照れ隠しちゅーしたんですか。
 …成長したな。<何/笑








Back






本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース