桜井みゆき、ちょっとやっちゃいます!


  046:名前



 お気に入りの便箋を取り出した。
 真ん中に恥ずかしいけど5文字だけ、書いてみようと思う。

 外を見た。
 スズメが電線にとまっていて可愛い。
 空もいつもより澄んで見える。
 ああ、恋をすると物の見方が変わるって本当ね!と一人で納得する。

 ごそごそと引き出しの中からノートを取り出す。
 椅子に座り直すと、そのノートに挟まれていた写真に目を向けた。

「風祭先輩…」

 机に置かれているクラブの集合写真の横に並べる。
 ノートに挟まれていたそれは、風祭という少年の部活の一コマだ。
 その一生懸命な表情に彼女はきゃっと照れた。

 集合写真も一目で彼を発見し、また見つめられているような気になって、照れた。
 見ていられなくなり顔を背ける。
 彼が見つめたのはカメラマンとカメラ本体であり、彼女ではないのだが。

 所詮恋は盲目である。


 さて、彼女は書いた。
 とびっきり丁寧に綺麗な文字で書いた。
 『風祭みゆき』と。

 ついでにこうも書いてみた。
 『桜井将』。



 彼女は直視できなくなり、ペンを置いてベッドに転がるように移動した。
 やだ恥ずかしいと思うのは彼女だけである。
 要は誰にも見つからなければ恥ずかしさなどは成り立たない筈ではあるが。



 しかし前に記述した通り、所詮恋は盲目。
 彼女の乙女の妄想は、果てしなく続くのである。









 馬鹿っぽい。みゆきちゃんはこーゆーことする子だと信じてやみません。
 絶対恋占いとか変なおまじないとか色々試してそうだ。







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