それ、何て言うか知ってる?
 場違い、って言うのよ。



  052:真昼の月



「小島さん、どうした?」

 声をかけられてようやくはっとした。
 そうだ、今は部活中。
 暑い中、真昼のサッカー部の部活動だ。
 季節は夏じゃないけれど、陽はかなり照っていて、運動をしている彼らはもう汗だくだ。
 長い髪を2つ、三つ編みにして、片方は胸元へ、もう片方は背へ垂らしている。
 胸元の毛先を左手で握った。
 右手には、ストップウォッチ。

「タイム、どうだった?」

 問う水野に慌てる。

「ごめんなさい、ちょっとぼんやりしていて」

 慌てて止める。
 恐らく、水野がゴールしてから30秒は経過していた。

「珍しい。疲れてるなら休んでていいぜ」

 気遣う言葉に微笑を浮かべる。

「ううん、平気。ごめんね、本当に」

 ならいいけど、と、水野は背を向ける。
 あたしは先程まで見ていた月にもう一度視線をやる。




「そこは、あんたの場所じゃないよ」




 月に向けた言葉。

 しかし、本当は自分に向けた言葉。


 サッカー部は、私の居場所じゃないもの。
 居心地はいい。
 サッカーに、携われてる。
 部員も優しい。

 けれど、そんな青空の中に、月は居ちゃいけないの。

 月は嘘をついてる。
 半分を、空に隠してる。

 サッカーが好きなのは本当。
 けど。
 眩しい中に居るべきじゃない。


 純粋にサッカーをやろうとしているあんたたちの中に、あたしは居ちゃいけない。

 場違いなのは、あたし。

 それを、月は象徴しているように見えて仕方がなかった。






「水野くん」

 にっこりと、笑顔を造る。

「ごめんね、やっぱりちょっと気分が悪いから、部室で休んでくる」

 笑顔は、崩さない。

「良いけど。帰った方が良いんじゃないのか?」

「平気」

 足早に、その場を去る。

 背中に、水野の視線を感じたまま。

 視界の端に、月を感じたまま。




 逃げても逃げても、白い真昼の月は、あたしを見ていた。










 有希さん謝ってばかりです…。




Back







本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース