君が好きだから





日が落ちるのが早くなって、もう季節は冬。
冷えた手をこすり合わせて、小さな公園のブランコを少し揺らす。

「一馬、遅いなぁ・・・」

辺りを見渡しても、そんな人影は一向に見当たらない。
きっと、サッカーの練習が長引いているんだ。
そう思って、両手に息を吹きかけた、そのとき、バタバタと騒がしく走ってくる音がした。
・・・ゴメン遅くなった・・・」
あたしの目の前に来るなり、一馬は息を整えながら必死に謝ってきた。
「いいって、気にしてないよ!練習、長引いたんでしょ?」
「・・・あぁ・・・ホント悪かった・・・」
「ううん。一馬こそ、走ってきてくれてありがとう」
「・・・いや」

ひとつ、大きく息を吐き出すと、一馬はあたしの隣のブランコに腰を下ろした。
額には少し汗をかいている。
そんなに急いでくれたのかと思うと嬉しいけれど、同時に申し訳なく感じる。
もっと、サッカーしたかったかもしれないし。
友達と、喋りたかったかもしれないし。
身体の疲労も、大きいと思うし。


あたしの小さなワガママが、一馬の大きな負担になってる気がする。


「練習の後、友達に誘われたりしなかったの?」
「したけど、断った」
「そっち優先してくれてよかったのに」
「えっ・・・いやいいんだよっ!どうせ大勢だったし・・・」
「ホントに?」
「・・・うん。は、気にすんな」

一馬は、少し笑って言った。安心しろって言ってるみたいに。
でもあたしには、無理に笑ってるようにしか見えなかった。


あたしは、一馬が好きだから、自分の生活を優先して欲しいって思ってる。
でも好きだから、たくさん会いたいって、思っちゃう。
でも、無理はさせたくない。
でも、会って話したい。
そんな気持ちがグチャグチャになって、いつも憂鬱になる。
なんでかなぁ。
あたしは一馬が好きで、一馬もあたしも好きでいてくれて。
それだけで、十分幸せなのに。
まだ、物足りないみたい。


「一馬、ムリ、してるでしょ」
あたしはブランコをこいで、一馬に顔が見えないようにした。
「・・・・・・え?」
「あたしね、一馬がサッカーやってるときに見せる、あの笑顔が大好きなの」
「・・・・・・そう、なのか」
「うん。でも一馬、あたしの前ではあの顔・・・したことないんだ」
「え・・・・・・」
一馬が立ち上がった。
困惑の表情を浮かべて、ただ、あたしを見ている。


また、困らせちゃったな。
あたしが一馬を好きになればなるほど、一馬の笑顔が消えていくみたい。


あたしは、ブランコを止めた。
「一馬、あたしたち、別れよ」
「・・・・・・はっ?なんで・・・」
「だって、あたしといるときの一馬、いつも困ってる」
「そんなことないって」
「でもきっと、お互いマイナスにしかなってないよ・・・」
あたしは顔を伏せた。
「本気・・・なのかよ」
「・・・・・・うん」
「俺の事、嫌いになったのか・・・?」
「違う!好きだから・・・別れるの・・・分かって」
あたしは顔を上げた。一馬はとても悲しそうな表情だった。
「そんなの・・・そんなの分かんねぇよ!」
言うなり、飲み物買ってくるといって、その場を離れた。


どうして、困らせたり、怒らせたりしか出来ないんだろう。
本当は別れたくなんか無い。でも、別れなきゃ
ダメだと思っても、一馬への思いが大きすぎて、口に出せない分が涙に変わった。






「・・・・・・なんで、泣いてんだよ」
「・・・・・・・」
戻ってきた一馬が、あたしの前に立ったのが分かった。
「・・・
「・・・・・・・」
!」
一馬が大声で言って、あたしの肩を掴んだ。
「一馬、痛い・・・・」
「俺は・・・が好きだ」
驚いて顔を上げると、一馬の顔が目の前にあった。
「かず、ま・・・・?」
「別れたく、ないんだ」

一馬の目を直視できなくて、少し目を伏せた。
地面に一馬が買ってきてくれた缶ジュースが転がっている。

「でも、このままじゃ、一馬・・・ダメになっちゃう」
「ならねぇよ!寧ろ別れた方が・・・ダメになる気がする」
「でも・・・・・・」
あたしが言いかけたとき、一馬に突然引き寄せられた。
「俺には、が、必要なんだ」


そんな事言わないで。
あたし、また欲張りになっちゃうから。


「別れたく、ない」
一馬の手に、更に力がこもったのが分かって、また涙が溢れてきた。
「あたしだって、別れたく、ないけど」
「じゃあ・・・」
「だって、すぐ、一馬に、負担・・・かけちゃう、し」
「・・・・・・」
「サッカーとか、友達との約束、優先して欲しいし」
「・・・・・・」
「でも、会いたくなっちゃって、寂しく、なって」


自分でもどうしたらいいのかわかんなくて。
ただ、好きなだけなのに。それだけなのに。


「一馬に、ずっと、傍にいてほしいって、ワガママになっちゃって」
「ワガママなんかじゃ、ないって」
一馬は腕を緩め、あたしと視線を合わせた。
「俺も、同じ事・・・思ってるし」
「・・・・一馬・・・・」
「俺、サッカーが忙しくて、あんま会えないけど、に傍にいてほしいって思ってる。
 何にも負担だなんて、思ってねぇから」
「・・・・・うん」
あたしは少し笑った。のに、一馬は視線をそらした。
「一馬・・・?」
「いろいろ、不安にさせて、悪かった」
「・・・・・・ううん」
「これからは、泣かせたり、しねぇから」
「・・・うん」

耳まで真っ赤になりながら、必死にそう言ってくれる一馬が愛しくて、
あたしは自分から一馬に身体を預けた。
芯まで冷え切った身体が少しずつ温まってきた気がした。

「ありがと、一馬」
「・・・おう」

そっと、本当にそっとだけど、一馬が抱き返してくれて。
あたしは幸せな気持ちに浸りながら、そっと、目を閉じた。










水谷さまにリクを頂きました、一馬くんです。
遅くなって申し訳ありませんでした…!本当にお待たせしました!
設定は、一馬とヒロインがケンカして、ヒロインが泣いちゃうといった感じでしたが、
全然達成できてない気がして本当に逃げ出したい気分です・・・。
お待たせした分、いいものをとまで言っていたのに・・・大嘘つきです私は・・・!
水谷さま、お気に召さないとは思いますが、貰ってやって下さい!
リクありがとうございました!




2004.12.15



 ひだまりみかんの風浦さまにいただきました。
 ヒロインさんが健気でめちゃくちゃ可愛いですっ。
 一馬がまた格好良く描かれているのですよ。ヘタレじゃない一馬っていいですね(笑)。
 風浦さま、本当にありがとうございました!



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