貰ったモノは



嬉しい『コトバ』と確かな『ヤクソク』









+11月3日+









武蔵森学園高等部、音楽教室。
休日である今日、そこからピアノの優しい音が流れていた。
奏者は笠井竹巳。
本日、めでたくも17歳になった。
観客は三上亮。
三上は、ピアノの隣に座って、黙って笠井のピアノを聞いている。



今日は、午前で部活が終わり、それと共に2人してココに放り込まれた。
笠井の親友である藤代曰く。

『今年も派手にするからな。準備が出来るまで待ってて。』

きっと今頃はパーティの準備で走り回っているのだろう。
毎年恒例の誕生パーティ。
音楽室に連れて来られるのは1つ目のプレゼント。
普段、部の練習があって、なかなかピアノが弾けない笠井の為に音楽室の鍵を開ける事。



「何にやけてるんだ?」
1曲弾き終わり、次の曲に入ろうとしている笠井の手を言葉で止めて、三上が近寄る。
「…にやけてました?」
「バッチリ。」
そう言って、ニヤニヤと、独特の笑みで笑う。
恥ずかしいなぁ、と頬を手で押さえて、それでも頬のゆるみは止まらない。
「何かね、毎年の事だけど嬉しいなぁって思って。」
「毎年って、単にあいつらが勝手に騒いでいるだけだろ?」
「そうですけど。」
でも誕生日を沢山の人に祝って貰えると言うのは、ココに来てからだ。
家にいた時は、家族にささやかに祝って貰っただけ。
それも充分嬉しかったけど、こちらの方が喜びは増している。
「俺、何か『オメデトウ』って言葉好きなんですよ。」
『オメデトウ』は最大級の賛辞。
今までやってきた事を認め、祝福してくれる言葉。
「…ふーん。」
興味なさそうに、三上は頷くだけ。
それでも笠井は嬉しそうに笑う。
1番嬉しかった『オメデトウ』は、今日、日付が変わると同時に貰った三上からの『オメデトウ』と言ったら、この人はどうな顔をするだろう。
でもそれは言ってやらない。



暫くは2人の間に言葉は無く、ただピアノの音が響いていた。
時計はもう4時。音楽室に来てもう2時間がたっている。
笠井のレパートリーももう尽きかけてきた。
「竹巳。」
「…はい?」
呼ばれて、鍵盤から顔を上げると、目の前に小さな紙袋が差し出された。
「…?」
視線だけで問う笠井に苦笑をやり、手の中にそれを落とす。
「誕生日プレゼント。」
「あ、ありがとうございます。」
それは片手に入り込む程の大きさで、少しの質感があった。
「…何ですか?」
「開けてみな。」
「はい。」
期待と共に、紙袋を開けるとそこに入っていたのはキーホルダー。
皮のプレートに、小さくロゴが入っている。
何処の物までは分からなかったが、おそらくブランド物だろう。
「…キーホルダー?」
片手に収まりきる程の大きさのそれは、特に何も付いている訳でもない。ただのキーホルダーだった。
「予約。」
「予約…ですか?」
「そう。」
そう言って三上は楽しそうに笑う。
そんな表情をしてると幼く見えるよな…、と思いながら笠井はもう1度キーホルダーを見る。
だがしかし、笠井がそれを見たからって答えが出る訳でもない。
「……何の?」
「さて問題です。俺のこの後の進路は?」
「プロ…でしょう?」
首を傾げながら笠井が答える。結局三上は笠井の質問を無視した。
「正解。…お前は?」
「音大ですけど。」
卒業後の進路に付いては前から2人の間で話されて来た。
三上はサッカーを続けて、笠井は音楽の道に入る。
「…それと、キーホルダーが関係あるんですか?」
「あるから言ってるんだろ?…卒業したら一緒に暮らそ?」
「………ハァ?」
あまりにも脈絡の無い言葉に、笠井の目が見開かれる。
「何、イヤな訳?」
「いえ!そう訳じゃないですけどっ!」
思い切り首を振る笠井に、三上は笑う。
「じゃあ、一緒に暮らす?」
「暮らしますっ!」
笠井は勢い良く頷く。
それを見て、三上は笑みを深める。
「ホントは指輪にしようかと思ったんだけど、しょっちゅう付けられる訳じゃねーだろ?」
「えぇ、まぁ。」
いくらサッカー部の中で『公認』カップルで居たとしても、世間に出てしまえば2人は『間違って』いるのだ。
「家の鍵…はまだ家ねぇし。だから、予約。」
「…つまり、家の鍵を付ける為の…?」
「そう。まぁ、春までには決まってんだろ。そん時までの代わりな。」
嬉しい?と聞いてくる三上に笑いかける。
「ハイ。…ありがとうございました。」






『笠井誕生日おめでとー!』
そんな歓声の中、サッカー部1軍+OBによるパーティは行われた。
「タクタク!はい、これ!渋沢さんと一緒に買ったんだ。」
「これ、写真立て?」
「そう!タク好きそうだなぁって思って。」
「…うん。ありがとう。」
笠井が頷くのを見て、藤代も嬉しそうに笑う。
「渋沢先輩は?」
渋沢にもお礼を言おうと、その姿を探すが見あたらない。
「渋沢さん、多分今厨房だと思う。」
「そっか…。じゃあ後でお礼言おうかな。」
「そうしな。…ところで、タク。三上先輩に何貰ったの?」
藤代が興味津々の顔で聞いてくる。
「………、内緒。」
「えー!!ずっけぇ、教えてくれてもいいじゃん!!」
「……内緒。」






この世に生まれて来た事を、感謝しよう。







+あとがき+
三上先輩プロポーズ編。
…別に早くないですよね?プロになるんだし。
と言うか意味分かります?



とにかく笠井君誕生日オメデトウ!!!






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