その日は、満月だった。



+月光浴+

明日から試験1週間前に入る為、武蔵森サッカー部も、明日からは練習が無い。
だからと言って、今時の若者が真面目に机に向かう訳でも無く、松葉寮はいつも通り、いやそれ以上にうるさかった。




(あぁ、でもこいつはいつも机に向かってるよな。)
同室になって2年目。親友と呼べるかどうかはまだ不明だが、とりあえず一緒にいて不快にならない渋沢は、やはり三上の思った通り、机に向かって勉強をしていた。
時計を見ると消灯30分前。
ネットをしていたパソコンの電源を消して、三上は眼鏡を外した。
やはり長時間椅子に座っているのは疲れる。
肩を回すとボキッと音を立てた。
すると、隣で笑い声が聞こえた。
「…あんだよ?」
「いや…。それよりもう寝るのか?」
走らせていたシャープペンを置き、こちらも背を伸ばす。
「んー、出かけて来る。」
「…もう消灯前だぞ?」
諫める様な−と言っても聞かないが、そんな口調で言うが、三上はそれを否定する。
「外じゃねぇよ。屋上。」
そう言いながら三上は椅子に掛けてあった上着を持って立った。
「何をしに?」
首を傾げる渋沢に、内緒、と言って部屋を出た。

これは、まだ誰にも言っていない秘密。






三上と笠井が付き合う様になって、1ヶ月が過ぎた。
その間、2人の関係は誰にも言わなかった。
理由は、笠井が2軍に居るためだ。
1軍と2軍が一緒に居るだけでも、依怙贔屓だと言い、手を出してくる2軍の者達(主に3年)がいる。
それ以外でも手を出してくる者達はいて、笠井がその被害に遭っている時、2人は出会った。






「三上先輩。」
「よう。」
三上よりも先に屋上に来ていた笠井は、Tシャツにズボン、と言う薄着だった。
そんな姿の笠井に顔をしかめ、三上は持っていた上着を肩に掛けた。
「風邪引くぞ。」
「すみません。」
こちらは怒っている(つもり)なのに、笠井の顔は嬉しそうに微笑んでいる。
「…何だよ。」
「三上先輩が優しい…。」
「てめ…。」
髪をグシャグシャにしてやると、嫌がって逃げようとする笠井を、三上は腕の中に抱いた。
そのまま、2人でコンクリートの上に座り込む。
コンクリートは冷たかったが、腕の中の存在が暖かくて、そんな事は気にならなかった。



髪を撫でてやると笠井は嬉しそうに微笑む。そんな笠井の表情が好きで、三上は先程乱した髪を、梳く様に撫でて行く。
「ねぇ、三上先輩?」
「ん?」
「今日、満月なんですよ?」
「…あぁ、」
空を見上げると、そこには丸い月が、静かに浮かんでいた。
そう言えば最近は月をゆっくり見上げた事など無かったかもしれない。
「月って三上先輩みたい…。」
「ハァ?」
「何かね、太陽に照らされないと光らないじゃないですか。でも、月って無くなったら困るでしょう?海とか、人間のサイクルとか。普段は気付かないけど、すっごい必要なんですよね、月って。」
そこで言葉を句切って、三上と視線を合わせる様に体を動かす。
「三上先輩もそんな感じなんです。分かりづらいけど、すっごい優しいですよね?」
「…結局何が言いたいんだ?」
照れ隠しに少しぶっきらぼうな口調で、でも笠井との視線は合わせたまま、三上は聞いた。
「すっごい寂しくても、月見てたらヘイキだなって。そんな事考えてたんです。さっき。」
さっきと言うのは、三上が来る前を指しているのだろう。
いや、いつもの時か。
周りに隠している分、こんな時にしかゆっくり話は出来ない。
「バァカ。」
そう言って、軽くキスをしてやって、抱きしめてやる。
「寂しくなったら月なんかみないで俺を呼べ。」
「…ハイ。」
そう言って笑った笠井の顔は、本日最高の物だった。





僕が君の月だとしたら。


君は僕の太陽だ。


だって僕は、もう君無しじゃ存在出来ない






+アトガキ+
三笠第1弾。
読み返して、三上先輩が笠井君の名を1度も呼んでない事と、
笠井君がずっと笑いっぱなしだと言う事に気付きました;;
でも、割と気にいってます。
秋、位の話と思ってください。
笠井君は私的に11月頃(中途半端な時期)に1軍入りしたと思ってます。





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