恋してたり友情確かめ合ったり



そんな事しながらも結局は俺達はまだまだガキと言う訳でして



とりあえずの所はサッカーにがんばりましょうか？





＋年始め＋






桜上水サッカー部恒例（にする予定）の年明けの『球蹴り』をしている中、水野はベンチに座ってその様子を眺めていた。
保護者変わりとして呼んだ小島選手を囲んでミニゲームをしているのは、結局風祭や高井などのいつものメンバーで。
他のメンバーはと言うと水野と同じ様に周りのベンチで休んでいた。



「そこの怪しい顔で女の子見つめてるお兄さん、たい焼きなんてどうでっか？」
「…………シゲ。」
振り返るとそこには両手に抱えられる紙袋を持ったシゲが立っていた。
水野の表情を気にする訳でも無く、その隣に座ると袋の中からたい焼きを１つ出した。
それを自分の口の中に入れてから水野の方を見やる。
「タツボンつぶ餡とねり餡どっち好きやったっけ？」
「ねり餡。」
「ほなどうぞ。」
「…サンキュ。」
差し出されたたい焼きを受け取って１口食べる。まだ暖かいそれは冷え切った体を少しばかりでも暖めてくれた。
「居なくなったと思ったらコレ買いに行ったのかよ。」
「そこの露店に知り合いおってな。まけてもろうてん。」
シゲの指さした方を振り返ると、露店の並びの端っこの方のたい焼き屋の４０代位の男が客相手に商売をしていた。
「……………１回ホンキでお前の交友関係調べたい。」
「バイトで知り会ってん。」
「そもそも中学生にバイトは無理だろ。」
「そこは俺の腕の見せ所や。」
何のだよ。
思わずツッコミたい衝動に駆られたがそこを押さえ、水野はもう１口たい焼きを食べた。
多分、食べなければ溜め息を付いただろうが。



「タツボンは何願い事したん？」
「んー、…とりあえず全国制覇、…後は色々。」
「なんや、色々って？」
「………色々は色々なんだよ。」
そう言うとシゲはニンマリと質の悪い笑みを浮かべた。
「…タツボン。」
「……何だよ。」
肩を組まれて耳元でささやかれる。
「………小島の事、願ったやろ？」
「してないっ！！」
バッと絡んできた腕をどかせるが逆効果で、シゲは遂には笑い出した。
「かわえーわー、タツボン。」
「だから違うって言ってるだろ！」
「ムキになって否定せんでもええって。分かるさかい。」
「………そう言うお前は？」
そう聞かれて、シゲは少し視線を虚空に彷徨わせた後こう言った。
「家内安全？」
「…疑問系で聞いてる時点で嘘だろ。」
「まぁな。」
それだけ言うとシゲは黙ってコートの中のボールを視線で追いかける。
その横顔を見て、多分、似た様な事なんだろうな。
そう思って、水野も一緒になってボールを目だけで追いかけた。



「タツボン小島ちゃんとどうなってん？」
暫く静かに試合を見ていると、急にそんな事を言われて、水野は思わずむせた。
「げほっげほっ………なんだよ急に。」
「いや、タツボンの親友としては気になりましてね。」
「そう言うお前はどうなんだよ。」
この捻くれた男が珍しくホンキになったと言う女が出来たと気付いたのは数ヶ月前だった。
「…俺の事はおいといて。」
シゲはそう言って誤魔化す様に笑い、それで？と聞いた。
それに溜め息をついて、水野はコートの中にいる小島を見た。
「……何にもなってねぇよ。今はサッカーで手一杯だし。」
俺も、あいつも。
言外にそう言うとシゲには正確に伝わった様で肩をすくめられた。
「タツボンは奥手やなぁ。男ならこうビシッと行かんと。」
「お前が行ったら考えるよ。」
「…………………………………………………………まぁ、まだまだ時間はあるしなぁ。」
そんな事を話してると彼らの思い人達が近寄ってきた。
「シゲ！水野！良い物食べてるじゃない。」
「んー、小島ちゃんとお嬢も食べるか？」
「貰うわ。」
そう言って２人にたい焼きを１つずつ渡す。
それを受け取って２人は水野の隣に腰掛けた。
「…ところでさっきからゲームに参加しないで何話してたの？」
小島のその質問に目を見合わせると、水野とシゲは苦笑した。
「男同士の会話や。」
「何よ、それ。怪しいわ。…ね、麻衣子。」
小島が聞くと、上條は肩をすくめただけだった。
「………さっき何願ったかって話だよ。」
「あ、駄目なんだよ、それ。」
「は？」
「願い事を他人に話しちゃったら叶わないんだよ？」




その後シゲの大爆笑がサッカーコート内に響いたとか何とか。

＋アトガキ＋
水野＆シゲの今年の目標。
『とりあえず現状よりは進めたい』
と言う感じなんですか？（←聞くな）。

他の学校はCPなんですけどやっぱ桜上水は仲間同士でわいわい騒ぐっぽいな…と思いまして。



今年があなたにとって良い１年でありますように。








　　Back