緑の章。〜それは全て心地良い風の色〜 |
「学校の宿題でさ」 いつもの昼休み休憩。 一馬と結人と英士が食堂でジュースを買っていた時のことである。 珍しく一馬からの話題は、二人にとっても貴重であり、嬉しいことだった。 「美術の。色の相関図?ってゆーの?円のやつ。」 英士は頷き、結人はオレンジジュースを口に運びながらも理解した様子だ。 「あれ、習ったんだけど。 そのあと、宿題で言われたんだよな…」 一馬が憂鬱そうな表情を落とすので英士は覗き込む。 「何言われたの」 このナイーブな少年に傷付くような台詞でも吐いたのか美術教師。 美術教師にすれば全く迷惑なとばっちりではあるが英士の知ったことではない。 「自分のイメージカラーは何か。書いて来い。」 ……そう、彼は本当に、真剣に悩んでいるようである。 「んなの適当に『情熱の赤』だとか『海のような青』とかでいいじゃん」 いかにも結人らしい発言だ。 「ゆーとはいいよなぁ…黄緑でさ」 「…それは一馬君、『若菜』だから…?」 こくりと一馬が首を縦に振ると結人はそのままうな垂れた。 「俺は?」 英士は自身の名前に色が関係ないことを確認してから問うた。 「英士は…そうだな、水色かな。 捕らえ所がないように思うけど、本当は優しい…そんな水みたいだから」 「ありがとう」 その会話を聞いてますます結人が凹んだのは当然だろう。 英士はそんな結人と一馬の空き缶を奪ってゴミ箱へ向かう。 「じゃあさ、一馬。」 音を鳴らして一缶一缶ゴミ箱へ入れていく。 「このポジションはどう?」 正面右から英士、一馬、結人。 「間で、緑。」 休憩時間もそろそろ終わりだ。 「…水色と、黄緑の間で…緑。緑か。…うん、いいな。」 外に出て、何故緑が自分にとってしっくりきたか分かった。 緑は、フィールドの色だ。 |