どう考えても私の誕生日は学年でも一番最後で。
お母さんは同窓会のときに誰よりも若いわよって言うけど。


私はこの誕生日が嫌だった。



  tiny present〜a.m.〜



今日も今日とて部活動。本日付で私たちは3年生になる。

もともと先輩がいない部活だったけど、後輩がきっと増えるから忙しくなる。
女子部では寧々先輩とのお別れだったけど、また来てくれるって。
高校入ってからも続けるよ、と言った先輩。

色んなことがあった1年だったなぁと思う。
これから部員がもっと増えればいいな。

4月1日、新学期の始まり。
そして、私の誕生日だ。


ずっと理不尽に思ってた。
4月生まれなのにどうして私は早生まれに分類されるんだろう。
もし自分が4月2日生まれだったら、サッカーも体躯的に有利だったのに。


カーテンを開けると、惜しい、曇りだ。
ふと、水野に何か嘘ついてやろう、と決めた。

だってエイプリルフール。

シゲは駄目。すぐバレてきっとつまんない。
風祭も駄目。逆に信じすぎて誤解が解けなくなる。
不破も駄目。何か考察されたら堪らない。

水野が一番適役だ。

学校だから制服に着替えて、ジャージと換えのTシャツをカバンに詰めて。
朝ごはんの時家族からおめでとうを言ってもらって。


元気良く家を出た。



   ------------------------



登校中、どんな嘘をつくか考えた。

そろそろ桜が咲きそうな枝振りをこちらに見せていた。

途中途中で出会うサッカー部の面々に、みゆきちゃんが風祭に頬を染めているのを見たりして。
皆口々におめでとうを言ってくれて。
ああ、春だなぁと思う。

そして、にやりと私は一人でこっそり笑った後、嘘を決めた。



   ------------------------



「おはよ。水野早いわねー」

先にサッカーボールのかごを引っ張り出していた水野に慌てて手伝いに駆けた。

「別に…あ、今日誕生日だよな」
あーあ、さらりと言ったつもりですか水野くん。
なんか言い方上ずってたのは気のせいですか?
ホント、不器用なやつ。

「え…私の?」

さぁ、嘘をつこう。

「私の誕生日なら、今日じゃないんだけど…?」

ちょっと戸惑った表情を作る。
わざとらしすぎないように。
水野はシゲほどじゃなくても勘がいいのだ。
特に女の子のわざとらしい作った顔には敏感だ。

「え…」
たっぷりと時間をおいて硬直を溶く水野。
どうやらきっちりと引っかかってくれたようだ。
心の中でほくそえみながら(あー楽しい!)水野を怒ったように見やる。


「あんた私の誕生日忘れてたの?うっわぁ〜、仲間としてそれはどうよ」
「え、で、でも今日4月1日だろ…4月…」

また水野はたっぷりと時間を要した。

ん、なんかバレそう。


「私着替えてくるねっ」
その時、誤算が生じた。


「タツボン〜俺お前の子供身ごもったわ〜責任取って〜」


あの馬鹿!
シゲは良く分からないかつ、分かりやすい嘘を言いながらくねって来た。

「4月…そうか、4月1日…エイプリルフールかお前ら!!」
「きゃー、いやん、俺身重やのに〜」

ばしばしと叩かれるシゲを横目にして、そろりと移動。
こっそりと逃げようとする私に水野は私のセーラーの端をつかんだ。


「小島?」
「いやん、セクハラっ」
シゲと同じようにいやんとか言ってみる。


「こ、じ、ま?」

アップの水野の顔。
あー、まぁ整った王子様顔でございますこと。
って場合じゃない。
駄目だ、ちょっと怒っていらっしゃる。

「お誕生日おめでとうっ、私!」

セーラーを両手で握ってしゃがみ込んだ。
その隙に水野の手が離れる。
私は「成功〜」と言いながら更衣室代わりに使わせてもらっている体操部部室にダッシュだ。


ああ、楽しかった!



   ------------------------



くたくたになって汗かいて桜の花びらが頬に張り付いて。


あんた早すぎでしょ、と桜の木を見上げる。
なぜかその1本だけ満開で、風が吹いたらひらひらと花びらは舞った。
他はまだつぼみで咲いてすらいないのがほとんどなのに。

ゆっくりと暗くなっていく世界に、日が暮れるのも遅くなったと校舎の時計を見ながら思った。


「…小島有希!わ、わたくしに、恐れをなして、サボってるのですわね!?」
麻衣子がふんぞり返って、その体勢は疲れた体に良くなかったのか今度は屈まって叫んだ。

やっと走り込みが終わったのだろう。
私は決めてあった量はもう終えていたのだ。

麻衣子もそうとうな運動量をこなせるようになってきた。
天性の負けず嫌いなんだろう、と思う。
あれはお嬢様の意地なんかだけじゃない。
絶対彼女の地だ。


「はいはい、後10週、行く?」

軽く言ってみる。
げっという顔を見せたが、私なら軽くこなせるという顔をすると彼女は猛スピードで走り出した。
あんなの10週なんて保つはずがない。

「冗談だって。着替えよ」
ぴたりと麻衣子は走るのをやめた。
そしてさっきより確実に速く走ってこっちに向かってくる。

「わっ…わたくしを騙すなんてどういう了見ですのっ!」
みゆきちゃんとしーちゃんは横で苦笑している。

「えーと、ほら、今日エイプリルフールだから!」

さっきのネタを使いまわす。
しかし、麻衣子の顔は面白いことになっていた。
どうやら忘れていたようだ。
あー、なんか水野より反応良くて面白いかも。


「わたくし、今日中に貴方を騙してみせますわ!」
「うん、頑張れ」

体操部の部室の片隅にあったかばんから新しいTシャツやタオルと取り出す。

「わたくしって実は料理が下手ですの!」
「ふーん」
上手いと思っているのか、あれを。
チョコレートムースを作ってきたときは何だかどろどろしたものだったが。
食べたのはシゲと不破ぐらいだ。


「わたくし、実は宇宙人ですの!」―まぁ宇宙人的な行動をされる時はありますがね?
「にんじんって空を飛ぶんですって」―武蔵森のエースさんが失神しますよ。
「昨日は3月30日でしたわね」―誕生日の前日ぐらい、日付分かります。
「日本○ムが優勝しました。」―日本○ムファンの方に殺されますよお嬢さん。
「赤ん坊は3mもあるペンギンが運んでくるって母に聞きましたわ」―ええと、コウノトリじゃなくて?


最後のがやけに笑えた。
想像するとちょっと面白い。
結局、麻衣子は私を騙せないまま部活は終わった。


   ------------------------

ミズユキの甘い続きがありますが。




  Back








本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース