| 051.ミサンガ 中学生になって、確実に上手くなったと言えることが一つだけある。 好きな人がサッカー部だったから、ミサンガをあげたくて。 毎日作ってたのでそれだけは絶対に上手くなったと思う。 幅を合わせるのが難しくて。 とか、色々コツやら何やら分かるようになって。 改心の出来のやつ、あげた。 その時の笑顔が忘れらんなくて。 私はまだそいつが好きだ。 こっそりお揃いで作ったミサンガは、まだ切れてない。 高校でミサンガの作り方教えてくれた女の子の話がめためたに可愛かったのです。 052.帽子 これだけは、言っておくけど、…俺、帽子似合わんから。 具体的にどれだけかっていうと。 ……。 ほら。 もういいだろ。 のっぽさんに見えたらいいとこなんだって。 「えー、でも可愛いよ」 男が可愛いとか言われて喜ぶかよ。 おい。 同じ帽子なのにお前がかぶると何でそんなに可愛いんだ。 …言わないけど。 女の子の可愛いと男の子の可愛いの定義はきっとちょっと違うのです。 053.ガッツポーズ 「くそ、入んねっ…」 「後一分だっ…俺の勝ちだな…」 「勝負は最後までわかんねーもんだぜっ」 「分かるね」 「…その余裕なくしてやるっ…」 １分後、どちらかはガッツポーズ。 バスケとか、そんな感じのをイメージ。 054.cool 「あっつー」 「暑くても言葉にするともっと暑くなるというのは今や常識だろ？」 「あんたのその説明口調のが暑くなる」 「じゃ、涼しい話しよっか」 「何ー」 「寒そうな英単語を交互に言っていく」 「うわ、うざ」 「cold」 「この前赤点で呼び出しくらった私に対する嫌味？」 「cool」 「あ、クールって、格好いいって意味もあったっけ」 「俺が？」 「うわ、うざ」 暑いと苛々しますねー。 055.じゃがいも じゃがいもは熱いうちに皮をむかないといけない。 恋愛もお熱いうちに。 天井のしみを発見しながらフォークに刺さったじゃがいもの皮むき。 ねぇ、どこで狂っちゃったんですか？ 私と貴方の歯車。 さよならしたなんてまだ信じられなくて。 ぼんやりと私はじゃがいもの皮をむき続けてる。 生でじゃなくて、ゆでてからの話ですよ。 056.発熱 病気になると寂しくなる。 人恋しい感じ。 熱が出たときは特にそう思う。 熱いなー、しんどいなー。 恋人さんが手、握っててくれてた。 冷たいなぁ…気持ちいいなぁ…。 たまには熱、出てもいいかもしんない。 なんて、こっそり不謹慎。 誰か傍に居てくれるだけでも嬉しいですが。 057.熱帯低気圧 「…なぁ母さん」 「んー？何。宿題やったの？」 「まぁそれは置いといて、熱帯低気圧と台風の違いって何？」 「置いとくな馬鹿息子」 「じゃあこれが宿題なんだと言えば？」 「そうなの？」 「うん」 「あら、そう」 「で？」 「何」 「違いは？」 「さぁ…。あ！あんた調べるのが宿題でしょ！」 ええと何だっけか。 058.畳 彼の部屋は、予想に反して和室だった。 いつも洋楽とか聴いてる癖にね。 「ベッドはないんだ？」 「畳に布団」 緑じゃなくて黄土色に変色しきった畳が、この部屋の小さな歴史を教える。 「うん、なんかいいね」 目に沿って指を滑らすと「掃除チェックか」とからかわれた。 「そんなつもりじゃないよ、いいね和室」 なめらかなその触れ心地にふと、彼の頬をも触ってみたくなった、とは言わない。 ベッド欲しいー＜待て 059.カーテンごしに 「待てよ」 「待たない」 「頼むから」 「どっかいってよ」 やっとのことで追いついた先には、カーテンにくるまる彼女の姿。 「も、ほっといて」 カーテンは震える彼女を捕らえている。 …カーテンになりたい、じゃないけど。 「頼む、から」 震える彼女を、カーテンごしに抱きしめた。 「泣かないでくれ…」 午後の優しい光は、二人をその上から包み込んでいる。 不用意なこと言っちゃった男の子。 060.あったかい 「今度の数学のテスト、難しくするって先生言ってたよ」 「うっわぁ、嫌だなぁ…。あ、ね、ヤマ張ってよ」 「嫌だよ…私のヤマ当たらないってこの前八つ当たりしたじゃん」 「お願い〜、今度の範囲分かんないとこだらけなんだよ」 「仕方ないなぁ…ん？なんか焦げ臭くない？」 「…ホントだ」 「げっ、あんたスカート！ストーブに近付け過ぎ！」 「うわわ！」 ストーブに乗っているヤカンからは白い蒸気。 手をこすり合わせて、他愛もない、日常の会話。 そんな毎日があったかい。 あの独特の匂いは公立に通わないと味わえないと思うのですが。 200index BACK NEXT |