| 071.髪留め さらりと髪が流れる。 何気ない仕草。 高く留めていた髪留めを外す。 たったそれだけのことなのに、心臓はうるさい。 髪に型なんか付かないで、黒光りした髪がどこか妖艶に目に映る。 「どうしたの」 どうもしないよ。 君に見蕩れているだけ。 奪いたい。 君の手の中の髪留めと、君の唇。 さらさら髪の人は髪を染めない方がキレイだと思うのですが。 072.雫 「…泊めて」 そう呟いたのは親友。 「…良いけど」 どうしたの？聞く前に私は了承した。 アパートの古びた足元のコンクリートに、水滴は大きくシミを作っていく。 ずぶ濡れになった彼女を見て、昼より雨がきつくなった事を知った。 髪から雨の雫がこぼれる。 顔からも、服からも。 ――それは、全部雨の雫？ 聞くことも出来ない。 「…入って」 こくんと頷く彼女に、どうしてかほっとした。 お題が活かせない…難しいです、文章って。 073.虫 「っきゃあああ！！！」 春先、道端、白い服。 彼女の叫び声は凄まじかった。 「虫っ、虫虫虫っ！！！！！！」 白いサマーセーターに小さな小さな羽虫がくっついていた。 ただそれだけ。 「取って取って取って！」 泣きそうな彼女に女の子だな、とふと思う。 頬を掻きながらひょいと羽虫をつまんで捨てると、彼女はやっと笑った。 …それにしても私は同性と思われていないのか？ ふとそんな羽虫ほどの疑問が頭をかすめた。 私は虫とか平気なんですが。 074.無知 「だーかーらー。ここはこうして、この式代入すれば一発なんだって」 「……」 「まっだ分かんないの！？」 「…この式はどこから出てきたんだ？」 「これは公式だって言ってるでしょもう！」 「…知るかよ」 「覚えといてってさっきも線引いたわよ…。無知！！」 「お前こそ無知だ」 「は？」 「俺がお前が好きって分かってないだろ」 散々悔しくて出てきた言葉は図らずも告白の言葉だった。 二人とも無知の使い方間違ってませんか。 075.ホットケーキ 「ちょっと待ってて、もうすぐ焼けるから」 奥さんが笑顔でフライ返しを握って。 幸せだなぁ、と思う。 でも、目の前で焼けるホットケーキを見て思うことは違う女の子のこと。 初めて女の子から何かを作って貰ったのがホットケーキで。 付き合う、なんて言葉さえ良く分かってなかった頃で。 ホットプレートじゃなくてフライパンでやってちょっと失敗してたっけ。 ハチミツが甘くて焦げが苦い、初恋のようなものの思い出。 ホットケーキ大好き…。 076.幽霊騒動 小学校の七不思議。 音楽室にベートーベンのユーレイが出るんだってさ。 「嘘に決まってる」 10人中9人がそう言って、1人が声を潜める。 「いや、俺の兄ちゃんの友達が見たって言ってた」 確かめに行こうぜ、お前怖いのかよ、そんなことねぇよ。 冬の6時半はもう外が暗くて、暗さと比例して胸が高鳴る。 びびってんだろ、まさか、じゃあ先に行けよ。 いつもの学校が異空間になる。 20歳までに忘れないと死ぬ言葉をまだ覚えてます。困った。（後4ヶ月か…） 077.想像力 ビートルズの歌にあったと思う。 「想像してごらん」 どういう英語だったっけ。 イマジン オール ザ ピープル。 こんな言い回しがあった気がする。 ねぇ、あの歌が流行った時と、今はどう違うの。 今も想像力を駆使して考えないといけないんじゃないの。 この国とか、他の国とか、世界とか。 愛とか、君とか、私とか。 ちょっと歯痒いけれど、きっと大切なこと。 ビートルズのストロベリー フィールズ フォーエバーが好きでした。 078.笛の音 もうすぐだ。 もうすぐ鳴ってしまう。 まだだまだだまだだまだだ！ 俺たちが目指していた場所に行けない。 このままだと行けない。 だからせめてもう少しだけ。 もう一回だけシュートを入れる時間をくれ。 無常にも笛の音が鳴る。 俺たちの夏は終わった。 バスケで1点差のイメージ。 079.確かに 「お前行けよ」 「ヤダよ」 「だってお前、俺が話しかけたら怖がらせてしまうだろうが」 「…確かに」 「…ちょっとはフォーローしてくれてもいいんじゃないのか友よ」 友よ。 080.まだ 好きな人がいます。 でも、まだ、言えないんです。 貴方が好き、とは。 何故かというと、あの人はまだ恋に目覚めていないから。 友達と話していたり、野球をしているほうがイキイキしてるから。 だから言っちゃいけないんです、まだ。 言っちゃったらきっと、戸惑って悩んじゃうから。 仲が良い「友達」の私との変化を恐れるから。 だから、まだ。 私は、きっと、待ってるから。 小学生、中学生では男女の成長差とか結構大きいですよね。 200index BACK NEXT |