| 081.高飛び 頂点に居る時間が好きだ。 太陽が近くなった気がする、あの瞬間が好きだ。 可笑しいかもしれない、絶対にビルの屋上にのぼった方が高いのに。 でも自力の全開で飛んだ、あの瞬間だけが、君という太陽に近付いた気になるんだ。 走り幅跳びの方が好きでしたし、記録も良かった覚えがあります。 082.どういう意味？ 「It is an ill wind that blows nobody any good.」 「ええと…、どういう意味ですか？」 「うん、この前漫画読んだんだよ、それで心に残った言葉。」 「いや、文脈が繋がらないのですが」 「ん、今の君に送る言葉。意味が分かんなかったら辞書引きなさい」 辞書引いても、俺の中学生用の英和辞書には載っていなくて。 どういう意味なのか分からないまま、センセイは俺の前から姿を消した。 あれ、失踪…？「誰の為にもならない風は吹かない」 083.うん、ただいま。 久しぶりに会った彼の表情は妙に凛々しさを含んでいた。 飛んでいけ。 遠くへ飛んでいけ。 あたしは、応援してる。 そして、あんたに食らいついてく。 助けなんて要らないから、どうか、あんたが飛べますように。 でも、「おかえり。」を言えた今に嬉しくて。 「うん、ただいま。」 その音にもっと嬉しくて。 全然オリジナルじゃない…（苦笑）。 084.その距離がとても愛しい。 「来ないで」 拒絶の言葉が聞こえる距離。震える肩が見える距離。 その距離がとてももどかしい。 「…お願い…だからっ…」 勇気を出して腕を掴んだ距離。零れ落ちる涙が見える距離。 その距離がとても切ない。 「…っ！？」 僕に驚いた顔を見せた距離。抱き締める事が出来る距離。 その距離がとても愛しい。 落ちが題名ってのはネタバレと同じですか。 085.背中 いつも喧嘩ばかりしていた。 １人の女の子を、本人の意思とは関係無しに取り合っていた。 自分と同じ程の実力の持ち主だと、嫌という程分かっている。 だから。 その娘を守るための利害が一致した今。 背中を預ける事が出来る相手としては、不足なしだ。 こいつ以外に俺は負ける気がしない。 そして、こいつとなら負けるはずがない。 背中合わせにしながら戦うっていうシチュエーションが好きなんですが…。 086.ミュール 「それ、履きにくくない？」 「どれ」 「そのくつ。」 「ああ、ミュールの事？さぁ、慣れたしねぇ」 「でもとっさの時に行動出来なさそう」 「とっさって？」 「敵に襲われた時とか」 「…あたしは軍人か？」 男の子って割とこんなこと言うような気が。 087.同じ。 「あ、この歌、私、好きだなぁ」 「ホントに？俺も」 特にこのフレーズが好き。 そう言って歌ったその場所は、間違いなく自分も一番好きな場所で。 大好きな君の大好きなその声で紡がれた大好きな言葉は。 君と同じ空間を共有していることでもっと大好きなものになる。 同じであることが嬉しくて嬉しくて。 088.違う。 「…違うの」 「何が。何がどう違うのか言ってくれなきゃ分かんないぜ」 「違…う…。私は、私が望んでる…のは…」 貴方と、同じ気持ちになりたかった、というだけのこと。 貴方に、近付きたかった、というだけのこと。 貴方と私、こんなに違うなんて、思ってもみなかった。 近付く努力をすることで、傷付いて。 089.起きてる？ うん、いや、ほんと。 あたし、初めてなんだよ？ こうやって、男の子と泊りがけで、旅行するの。 そして、こうやってベッドの端同士に寝るの。 もそもそとシーツが擦れる音が室内に響いて、それだけで心臓は高鳴る。 「…起きてる？」 「…起きてる。」 シーツの中で、手と手が触れ合う。 泊りがけで旅行する仲の癖に…（ぉ 090.甘える 「すきーっ」 「…何」 「いやぁ、君がすきですよーって事を、こう、全面に押し出そうと…」 「せんで良い」 「またまたぁ、してほしい癖にぃ」 「いらんと言っておろうが」 「やだやだ。あたし、今日一杯甘えたい気分なんだよ！」 「俺は違う」 「やだ。甘える。」 「やだ。逃げる。」 「え…ちょ、ほ、ホントに逃げなくてもいいじゃんっ！」 甘えていなくても、今日は一杯君の優しさに甘えた日。 ただのバカップルとも言える。 200index BACK NEXT |