| 091.水素 あまりに軽くて飛行船に使用されたのに。 引火しやすいって理由で使わなくなったんだって。 なんて人間というものは勝手なんだ。 本を閉じたご立腹の僕に彼女は微笑んだ。 「人間なんて勝手なものよ。好きになったり嫌いになったり」 「それって、あんま良くない」 「じゃあ、水素の爆発するかもしんない飛行船に乗りたい？」 「ヤだ」 「勝手ね」 お題を考えた意図が分かりません。何だよ水素って＜勝手 092.絵 「その絵、億単位だぜ」 「マジで！？信じらんねぇ」 「そんな金あるんだったら十分の一でも分けてくんねーかな」 「あんたたち、芸術の前にそんな事言うんじゃないよ」 「なんだよ、じゃあお前はこの絵のスバラシサが分かるのかよ」 「…………」 「……何だよ」 「……私に分かる筈ないでしょう」 素人の絵でも感動したり、ピカソの絵でも落書きにしか見えなかったり。 093.文 「これ、なんだっけ」 「これってどれ」 「これだよこれ」 「指示語ばっか使ってるとボケるぞ…ったく」 「こーれ。この地図記号」 「文…？学校だろう」 「学校？何で学校が文なわけ？」 「そりゃ、文読んだり書いたりする場所だからだろ」 「読んだり書いたり……してるか？」 「お前、本当に受験生か？」 それはヤバイですよ。勉強してください。 094.私の言葉を聞いて。 学校に、行きたくなくて。 部屋に、ずっと閉じこもっていたいと思った。 学校に、来い、と、言う、教師。 学校に、行け、と、言う、両親。 ねぇ、私の、たった一つの言葉を、聞いて。 誰か、ねぇ。 この闇から、救い出して…。 この、私の言葉を聞いて。 ザ・他力本願。…こんな気持ちになるのは痛い程分かってはいるのですが。 095.今 「今はもう二度と来ないんだから」 そんなこと、分かってるし。 っていうか、「今」なんて、極論「ずっと今」で。 「今」は二度とどころか、永遠に来てる。 だからって、「今」を大切にしないってわけじゃないけどさ。 教師の長いお説教を聞き流しながら次の休み時間の事を考えていた。 揚げ足取りみたい…。 096.きっときっときっと 誰かが来てくれる。 確信にも似たその思いは…。 走り抜けたそこには、一つの水色の影。 ―…繋がった！ 裏手を使って敵を欺くパス。 お前が来てくれるって、信じてた！ きっときっときっと。 否、それは確信だった。 そのシュートが入る、って。 バスケとかそんな感じで。 097.無敵のコンビ 3年D組委員長と副委員長。 推薦の全員一致で決定したそんなある日。 「嫌ーーー！！絶対に嫌ーーーー！！！」 「大人しくしろよ俺だって嫌だ」 「だってあんたとなんか…嫌ーー！」 「決まったモンは仕方無いだろ」 彼らが学年主任から「無敵のコンビ」と称されるようになるのは、 これから2ヵ月後のこと。 こういう仲悪いけど通じ合ってる二人とか大好きです。 098.雀 私の彼氏は変わってる。 どうゆーわけか、雀にぞっこんラブなのだ。 「公園行かない？」 「良いけど」 「あ、じゃあお菓子買って行かないとなぁ」 「お花見でもする気？」 「いや、俺の分じゃなくて、雀に餌付けを…」 「はぁ、雀。」 「雀。見ろよ、あのひょこひょことした可愛らしい足」 「鳥ってあんなもんよ」 「あの小さいクチバシでご飯を食べる仕草」 「あんだけ小さい体だとクチバシもそりゃ小さいわね」 雀にヤキモチなんて妬きたくないわよ。 私はどちらかというと好き。 099.姫 ふわふわ、ひらひら。 童話の中のお姫様って、そんなイメージ。 召し使いに混じっておてんばする姫様の物語もあったけど。 それは、別として。 王子様のキスで目覚める、それまで待つばかりのお姫様。 ねぇ、退屈じゃない？ 私なら、自力で起きて、魔女を倒す力になりたいわ。 彼女たちは暇そうだなぁと思ったのですよ。 100.素肌 くすくす、声が聞こえて、俺は覚醒した。 「おはよー」 「…はよ。何だよ、笑って」 「だって、くすぐったいんだもん」 無意識に触れていた彼女のわき腹から名残惜しげに手を離す。 「気持ち良かったんだけどなー」 「私はくすぐったいんだってば」 笑う彼女に、昨夜と今朝の愛しさがこみ上げてきて。 俺は素肌のわき腹に手を伸ばした。 こういう雰囲気って好き。好きな人同士しか、出来ないじゃないですか。 200index BACK NEXT |